2011年11月 「県新人大会」
 
 気仙沼地区
 
 東日本大震災による被害が最も大きかった地域の一つです。この年の気仙沼地区新人大会男子団体優勝校も例外ではありませんでした。
 
 震災直後の卒業式の映像が全国で放送された学校なのですが,この学校の卓球部は全員が中学校で初めてラケットを握る部員ばかりです。そのチームが被災後練習を再開したのは5月に入ってから。9月一杯まで体育館も一部の教室も避難所となったため,避難している方々がお住まいになっていた階の教室で練習するのが精一杯でした。そんな困難を乗り越えてつかんだ地区優勝。顧問の先生は「朝6時から教室で朝練しても,文句1つ言わず見守ってくれた避難所の方々に感謝しています」と振り返ってくれました。
 
 さて,11月。第7シードで臨んだ県新人大会。このチームの快進撃が始まります。準々決勝,準決勝と次々に上位シード校を破り,何と,決勝進出!第1シードに挑んだ決勝戦は,しかしながら,あっという間に0-2で3番ダブルス。そのダブルスも0-2と追い詰められました。
 
 しかし,ここからダブルスが踏ん張り,逆転で1点を返す。続く4番もゲームカウント3-2で5番につなぐ。5番も苦戦を強いられ0-2でリードを許す。ところがここから巻き返し,何と3-2で大逆転勝利を飾りました!
 
 まさに「奇跡」の逆転勝利。歓喜に沸くチームの輪の中にいた監督の先生に,私もお祝いとばかりに「全国中学校選抜卓球大会」の出場を案内しました。しかし,返ってきた答えは意外なものでした。
 
 「行きたいけど,行くなんて簡単に言えないよ。」
 
 私自身もハッとするとともに,浮かれた雰囲気で話を持ち掛けたことを強く後悔しました。
 
 選手のご家庭はほぼ例外なく被災しています。本来ならば,県大会に選手を送り込むのも困難なはず。それが全国大会出場となれば,予選を突破する以上に高いハードルが待ち構えています。結局,この日から2か月以上,「参加」の正式返答は届きませんでした。
 
 この状況を,またしても全国の皆様からの御支援が救ってくださいました。全国から寄せられた義援金により,全国選抜の選手派遣を補助することができたのです!補助が決定されて程なく,この学校から正式に「参加」の回答を頂きました。
 
 逆境にも負けずに頑張った選手たちの努力が,冬の宮城で,大きく花咲いた1日でした。
 
 
※ その学校が,支援者の方々に宛てた,お礼の手紙